和尚のつぶやき

お香功徳

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前々から思っていたことではあることだったが、今回は、参った。
葬儀場での焼香の話。式が始まる前、悪いお香を使っているな、と思ったが最近はどこの葬儀屋さんも木くずみたいなお香を使っているので、諦めてはいた。自分自身が他人様より喉が弱くて神経質になりすぎている節も有るやもしれぬと思ってはいたが、これはいけません。お焼香になるや否や、もう狸の燻りだし状態、おまけに式場はゴホン、ゲホンの海となる。何のためのお香やら。
経典には精霊は香を食となし、供物の香りは煙に乗って届けられるとあり、また天人は香を食す、とある。仏道の修行徳目に六波羅蜜(布施、持戒、忍辱、精進、禅定、知恵)を挙げているが、香は精進不退転の徳。消えることなく同じ速さで燃えていくさまを精進努力にあてている。
昨今の式場でのお焼香は折角の精進努力の意志も気力も奪い去っていくばかりの劣悪さで、人を送るという最も尊厳なる時間を殆ど台無しにしている。
と、言って、お香は今日はダイアモンドより高いというのがその世界の常識となっている。そんな高価なものをモクモク焚く訳にはいかない。どうすればいいのやら。
亡くなった人を送るのにお香は心を穏やかにし、追悼の気持ちを高めます。好いお香の香りであれば、、、、、けれども好いお香は高くて手に入らない。
目に見えなくとも、匂わなくとも、思うこころがあれば、それこそが誠の香と言うべきでしょう。戒香経には、仏の浄戒の香を持たば、諸の天さえ普く聞いて、皆、愛し敬わん。かくのごとく如く清浄の戒を具足するにより、すなわち常に諸の善法を行うに至らば、この人は、よく世間の縛(ばく 煩悩)を解いて、あらゆる諸の魔も、常に遠く離れん。と、あります。よく戒を守れる人の祈りの心が香となって死者の霊を慰めるのですね。

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