この叔父さんに騙されました。巡礼途中、とあるバルで斜め越しに座りました。何となく目があって、そのうちにお互いじっと見ることになってしまって、こちらから歩み寄って、はい パチリ。フランス人でした。ジュネーヴに近いフランスというから、リヨンに近いのかも知れない。小林さんのいる辺りかなあ。と思った。
見た通り立派な髭、見事だ。フランスの我が家から歩いてかれこれ二ヶ月になるという。ヨーロッパの巡礼者にはこの手の人が多い。レコンキスタによって完成を見たサンチアゴコンポステラだから、ヨーロッパの人たちには自分の家からが、カミノの道なのである。
頭のてっぺんはちょと禿げてはいるが、どうしてどうして立派な髭である。美しいシルバーである。お互い得意の共通言語がないので、cuantos anos?(お幾つ?)となる。てっきり私より上だと思っていたので、敬意を表して、私は80才と述べました。ちょっと躊躇ののち63才と申たわれました。
フォローもこめて、立派なヒゲですねえと。家から出発後一度も手入れをしなかったらこうなったと、髭を撫で始めた。私は、同年か年上かと思って、巡礼の苦労を慰め合いたいなあとおもったのだが当てが外れました。フランス叔父さんとは一応の敬意を表してお別れ。その後、どこかのレストランで出会いましたが、同郷のフランス人とでも会ったのでしょうか、怪気炎の様子でした。30年以上前、ネパールヒマラヤトレキング走りまくった時、髭が大いに伸びました。そのままにしておいたら、右の頬の毛は下に、左の頬の毛は上に伸びたのです。顔が曲がっている様です。顔まで根性が曲がっていると大いに悲しんだものです。