和尚のつぶやき

ブルゴス

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ブルゴスへの朝。空は満月。小さな村を抜けると、何も見えない麦畑であろう延々たる丘陵の上に、ドングリ目玉の様に光る月ひとつ。空気があまりにも綺麗ので、まるで息をでもしているようだ。月はこんなにも光っているのかと驚きながら暗闇を歩く。やがて東の空から薄っすらと光が差し来ると、まるで我慢しきれなかった様にダダダと光の逆襲だ。思わず、来し方先を帰り見て光の温もりを喜ぶ。八月後半出発のこの度のサンチャゴは、相当の暑さを覚悟の旅であった。さにあらず、朝の出立は、半袖では寒いぐらいで、後半は羽毛を羽織っての巡礼となる。日が照っても、時折の風は、前進の勇気を煥発せしめてくれるし、かって目眩のする様な暑さは遂に経験することなく、飛行場を迂回、アリアンゾン川の清流を右に見ながら、ブルゴスの大教会の前に到着。頑張りました。夕食は教会前の広場で頂きました。食事中、カテドラルの鐘がなり始めました。四つぐらいの鐘がグルグル回って、ガランゴロンとなんと十数分。教会の鐘には兎に角驚きます。教会の鐘もお寺の鐘も、遠音のほうが真価を発揮する様です。カミーノ デ サンチアゴの道は、サン ジャン ピエード ポー からサンチアゴまでの八百キロです。フィニスチエラまでですと、千キロの巡礼路です。この長き巡礼を終えた時、初めて巡礼の意味を知り得る権利を得ることが出来るのだと思います。私の巡礼は五百キロ、そして三百キロと足し算的になし終えましたが、わが身の体力と気力を鑑みる時、しみじみ、八百キロを完歩なさった、また今まさに、その巡礼中のペリグルム(巡礼者)に深い尊敬と敬意をあらわさずにはおれません。有り難い人々です。巡礼者にも色々います。色々で結構。だからこそ、本物が光るのです。最後の感謝のミサに預かろうと参りましたが、ちょっと遅れたため、締め出しとなりました。お礼は、サンチアゴで。

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