泊まるべき街や村に着くとアルベルゲを探して先づ予約。ホッと一安心。もたもた歩いていると、収容人数が限られているので下手をすると、門前払の憂き目にあってしまう。
今夜は、一緒のアルベルゲのコリアン、四人と総勢八人の手作り合戦夕食会。その出来栄えに同宿の人たちからも歓声。
我々の食事の前に、スペインの老夫婦がうるさくわいわいの中、静かに簡易食事をとっていた。お二人ともスペイン語オンリーなので、特にご主人は他の巡礼者と話すこともなく淡々と寝る用意をされていた。同室の巡礼部屋の朝の出発前は、夫々時間が違うので、四時半頃からガサゴソとうるさい。私は同室の人が起きていようと寝ていようとも、六時には部屋の電気をつける事にします。そんな事もあって、このご夫婦にもそのようにお伝えすると、私たちは五時に出ますから、という話である。荷物の片ずけもあるでしょうから電気をどうぞ、と申し上げると、その必要は無いとおっしゃった。
同室の若い者は夜中もなにやら知らずごそごそとうるさい限り。
果たして翌朝、ご夫妻は、コトリの音も無く出立なされたのである。誰一人気付かぬうちに。
鮮やかである。巡礼のプロ。あるべき巡礼者のお手本であろう。
朝起きて、散乱の荷物をまとめてぐずぐずの若者には、この深さが分からない。
人に 迷惑かけずさらりと宿を出るご夫婦に巡礼の哲学を 見ました。