スペイン巡礼

スペイン最後の夜

スペイン最後の夜

今日でスペイン滞在が最後の夜となりました。何でも、誰でもそうなんでしょうが、過ぎてしまえばあっと言う間だと。長かったようだし、短かったようだし、色んな思いが交錯します。9月6日から10月3日まで只管(ひたすら)、サンチャゴに向かって歩いておりました。それ以後は、電車でサンチャゴからバルセロナまで、まる一日のスペイン車窓旅。ガウディやらピカソやらとちょっと文化考察視覚向上日、等々。
 実は、今回のスペイン行きは、サンチャゴ巡礼だけが頭にあって、体力に自信がない自分にとっては、あとは予定日のつもりの日数でした。バルセロナ滞在は、十分すぎる程の日数だったのです。で、下調べが全くなくて、上手く使い切ることが出来なかったのを反省しておりましす。     
 20数年前にちょっと生活したことのあるモンセラート、ベネディクト修道院に行きましたが、今回は、観光客としての訪問でしたので、面食らってしまいました。高野山や永平寺で、山深く人の匂いも少ない隔離されて護られていた修行僧が、いきなり、身ぐるみはがされて観光地のど真ん中に突き落とされたような、まあ、そんな感覚でした。中と外では大違いで、かくも世間ずれの人となった今の私でも、ショックは隠せませんでした。修道の道に、もう少しひたすらであったあの頃の自分を思い返しながら、現実に対応しきれない現在の自分を、ほろ苦く思ったものでした。
 モンセラート修道院を後にしてバルセロナに戻った夜、イスパニヤ広場の噴水ショーは実に楽しいものでした。イルミネイトされた噴水は、連続10分以上と思われる時間を、徐々に歌いあげていく歌声とともに、これでもか、これでもかと吹き捲ります。感動です。感動しました。 
 不思議ですね。時間があって、自由であるバルセロナ滞在中は、ただボーっと日々を消化しているだけで、それ以外のなにものでもないのですが、サンチャゴ巡礼中は、歩くことに精一杯と言うか、集中しているはずなのに、お寺に帰ったらあそこをこう変えて、ここはああ変えてと、次から次へと面白いようにアイデアが湧いてきます。ひねり出すのではなく、ポンポンと飛び出してくるのです。
 禅語に「動中の工夫は静中の工夫に勝ること数千億倍と」とあります。西行法師も芭蕉も、己の一歩が生み出した文学ですね。心打つ文学の多くは、そういう工夫がみられます。静かに坐るのは、動中の工夫に一層の精彩を得るがための一息なのです。良き活動は良き瞑想から。忘れてはならない工夫ですね。

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