和尚のつぶやき

ぎんなん村とむいちの屁

『銀杏村と無一の屁』

ある所に、無一という変わりもので有名な小僧さんがおりました。周りの小僧さんは『はい!』とキビキビ行動するのですが、無一は『へえ』と返事をして、おまけに、ぷっと屁をこき、和尚さんがして欲しいこととはまるで違うことをしてしまうのです。

ある日無一は、お寺の和尚さんに頼まれて、隣の銀杏村の様子を見てくるようにと言われました。銀杏村から変な臭いがするし、村の様子がおかしいのです。

無一は『へえ』と言っておならをぷっぷっとして、出かけました。

林を歩いていますと、沢が流れていました。無一は顔をパシャパシャっと洗いました。その間にイタズラ好きのリス達が、無一の3日分の食料の入ったずだ袋を木の上に隠してしまいました。
カバンがないことに気づいた無一は顔色ひとつ変えずに、「ほ〜か〜」と言い、おならをぷぷっとしました。

丸一日かかって、無一が銀杏村に着いたのはもうすっかり夜でした。「こりゃー大変だー」と無一はいいました。この村の木という木に可愛い実がぶらさがっているのですが、それが、臭いこと臭いこと!!「オイラだってこんな臭い屁はこいたことがないぞ」でも、大変です。村中の人は、隣の村へ避難しているようでした。

無一はどうにかしようと実を落とし始めました。落としても落としてもまだまだあります。臭いは一向に消えません。

さて、無一が1週間たっても2週間たっても帰って来ないので和尚さんは、他の小僧さんに様子を見てくるように言いました。小僧さん達は村に半分位近づくとあまりの臭いに足が止まってしまいました。和尚さんから預かった、無一の大好物のフカシイモを銀杏村に投げ入れるのがやっとで、逃げ帰ってしまいました。
フカシイモを食べながら、無一は無心に実を落とします。イモを食べるので、無一の屁はとまりません。プッププッぷー。プッパーパー。実の臭いと無一の屁で更に強烈な臭い、村中まっ黄黄になりました。

そしてついに最後の実を落とした所で、無一は木の上に登りました。そこに風がふわっと通りました。無一は幼い頃 母に教わったシノブエを吹きました。「ピーリリーピーララー♪」やっぱり屁もとまりません「プップルプーパラパラペー」
風が流れます。流れて流れて笛の音色も臭いも村中を黄色く立ち込めていたものもぜーんぶ流れて、すっかり新しい空気に変わりました。

銀杏村の人々は大喜びで村に戻ってきました。
無一が落とした実は、固い殻の中にとってもきれいな黄銀色、焼いても煎ってもそれはそれは美味しいものでした。銀杏村にちなんでその実は銀杏と呼ばれるようになりました。

銀杏村に伝わるお話。昔むかし銀杏村の和尚さん無一が、小僧さんの時のお話です。

絵と文 太田 晶子

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